型吹きガラスの形の変化
型吹きガラスならいつでも同じものが容易に出来ると考えるのは、実は現実を知らない人の考えることなのです。そのときそのときで微妙に形が違いますし、時がたつにつれてかなり形が違ってくることが多いのです。
型吹きガラスは、いつでも同じ形の製品になるはずなのですが、実際には少しづつみんな違っているのです。型吹きガラスは切子細工用の素材として、江戸切子や薩摩切子に使われることがあります。
作家によって色々の型を使われるでしょうけれども、あるガラス工芸家は型吹きガラスのために蜜柑の缶詰の空き缶を使ったことがあるそうです。
暫く使っていますと、どうしても缶詰がへこんできたり、錆びてきたりします。そのため製品の形が変わってくるのです。
ただ単なる円筒の製品では面白くありませんので、缶詰の内側に割り箸をくっつけて吹くこともあるそうです。そのようなときには、吹くたびに割り箸が焦げてきます。
焼けて燃えれば製品の形が徐々に変わっていきます。
そのようなわけで一般用のコップを型吹きしていると、コップの形が少しづつ変わってくるのだそうです。
型吹きガラスは切子細工用の素材として、江戸切子や薩摩切子に使われることがあります。切子細工と言うのは、グラスなどの表面をダイヤモンドホイールなどによって彫刻する装飾方法です。江戸切子は最初透明でしたが、薩摩切子の技法を取り入れ、着色層を持つ2重ガラスが多くなっています。それでもすっきり感をだすため、江戸切子は薩摩切子よりも厚みの薄い着色層を用いています。
それと、もう一つの原因として、内部で膨らませる硝子の膨らませ方が一定しないことも微妙な違いを生じます。
力を入れて吹いたときは細部まで行き渡りますが、少し吹く力が弱いときは細かなところまでガラスが行き渡らず、ヌメッとした感じの製品になるそうです。
あるいは、同じ力で仮にふけたとしても、そのときの硝子の温度が違えば同じようなことが起こりますし、型の中に入っている時間の差も微妙ですが作品の切れ味に差が出てしまいます。
型吹きガラスだからと言っても、厳密に言えば、いつも同じ形になるとは言い切れないのです。
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